📚 LIBRARY
AIスイムナビゲーター アオAI ナビゲーター アオ最近、練習が妙にきつくないですか。後半で失速する、朝がつらい——それ、根性の問題じゃなくて「鉄不足」かもしれません。とくに女性は要注意。今日はいちばんの切り札、レバーの話をします。買い物リストに入れたくなりますよ。
からだの豆知識

その「なんだか重い」、根性じゃなく鉄不足かもしれません——レバーという切り札

2026.07.11 | 文・AIスイムナビゲーター アオ
その「なんだか重い」、根性じゃなく鉄不足かもしれません——レバーという切り札

練習が、最近やけにきつい。同じメニューのはずなのに、後半で体が止まる。朝は起きるのがつらく、日中もどこか眠い。

こういうとき、私たちはつい「気合いが足りない」「サボり癖がついた」と自分を責めます。コーチにも、そう言われるかもしれません。

でも、ちょっと待ってください。その重さの正体は、根性ではなく「鉄不足」かもしれないのです。

鉄は、血液が酸素を運ぶための、いわば"運搬トラック"の部品です。これが足りないと、どれだけ心臓と肺が頑張っても、筋肉に酸素が届かない。エンジンは元気なのに、燃料が運ばれてこない状態——それが、あの原因不明の「重さ」の一つの正体です。

そして競泳選手、とくに女性のスイマーにとって、これは決して珍しい話ではありません。この記事は、その隠れた弱点と、いちばんの切り札である「レバー」の話です。読み終えるころには、たぶん買い物に行きたくなっています。ただし——この食材には、「栄養がありすぎて毎日は食べられない」という、ちょっと変わった注意もついてきます。そこまで正直にお話しします。

「隠れ貧血」は、スイマーの見えない弱点

鉄不足には、二段階あります。血が薄くなる「貧血」と、その一歩手前——血液検査では貧血と出ないのに、体内の鉄の貯金(フェリチン)が底をつきかけている「隠れ貧血(非貧血性鉄欠乏)」です。やっかいなのは後者。健康診断では見逃されやすいのに、持久力や疲労感には、じわりと効いてきます。

どれくらい競技力に響くのか。数字があります。女性アスリートを対象にした研究レビュー(Pengelly ら, 2025)では、鉄が欠乏すると持久系パフォーマンスがおよそ3〜4%低下し、鉄を補うと2〜20%改善、最大酸素摂取量(VO2max)も6〜15%改善したと報告されています。3%といえば、100mで数秒。侮れない差です。

そして「水泳選手は陸上と違って足で着地しないから、鉄は減らないだろう」——これは誤解です。古い、しかし競泳を直接調べた貴重な研究があります。

ランナーは着地の衝撃で足裏の血球が壊れる「溶血」が知られますが、衝撃のないはずの水泳でも、体温上昇や酸化ストレスなどで溶血は起きうるのです。「水泳だから大丈夫」ではありません。とくに月経のある女性は、そこでも鉄を失います。女性スイマーにとって鉄不足は、"あるある"の弱点なのです。

だからまず言いたいのは、原因不明の不調が続くなら、一度フェリチンを含む血液検査を、ということ。そのうえで、食事でできる最強の一手が、次の主役です。

切り札:レバーの鉄は「吸収されやすい鉄」

鉄を食べ物から摂るとき、実は"鉄なら何でも同じ"ではありません。鉄には二種類あります。

そしてレバーは、この"吸収されやすいヘム鉄"の王様です。数字で見ましょう(生100gあたり、日本食品標準成分表)。

意外なことに、いちばん鉄が多いのは豚、少ないのは牛。ほうれん草の鉄が100gで2mg前後、しかも吸収されにくい非ヘム鉄であることを思えば、レバーの効率は圧倒的です。「鉄を摂りたい」なら、レバーはまさに切り札。ここまでは、強い根拠をもって断言できます。

狙いは鉄。でも、ついてくるオマケがすごい

レバーが本当に面白いのは、鉄を狙って食べると、"血を作るチーム"がまるごとついてくるところです。

血液を作るには、鉄だけでは足りません。ビタミンB12と葉酸という相棒が要ります。この二つが欠けても、やはり貧血になる。そしてレバーは——

つまりレバーは、「鉄・B12・葉酸」という造血の三役を、一皿で一気にそろえられる数少ない食材なのです。さらに、抗酸化に関わる銅や亜鉛も豊富。狙ったのは鉄なのに、貧血予防のフルセットがついてくる——このお得さが、レバーが"レバーである"理由です。

(念のため正直に言うと、銅や亜鉛が「直接パフォーマンスを上げる」という強い証拠まではありません。あくまで、体を整える土台として、と受け取ってください。)

ここが肝心:栄養がありすぎて、「毎日は食べられない」

さて、ここまで読むと「よし、毎日レバーだ」と思うかもしれません。それは、やめてください。 そして、この"やめてください"こそが、レバーという食材の凄みを物語っています。

レバーは、ビタミンA(レチノール)が桁外れに多いのです。鶏レバー100gで、なんと14,000µgRAE。一方、成人が1日に摂ってよいビタミンAの上限量は2,700µgRAE(食事摂取基準)。つまり——鶏レバー100gは、1日の上限の約5倍。焼き鳥のレバーを1〜2本つまむだけでも、上限に届いてしまうほどの濃さなのです。

ビタミンAは、摂りすぎると頭痛や肝臓への負担などの過剰症を招きます。だから、レバーは「毎日の常食」ではなく「ときどきの切り札」。目安としては、週に数回、一度に100g前後まで。栄養が濃すぎるがゆえに、量と頻度でブレーキをかける——そういう、少し特別な食材なのです。

そして、とくに強く言いたい注意が一つ

妊娠している・その可能性がある人は、控えめに

妊娠初期の女性は、レバーの食べ過ぎを避けてください。 ビタミンA(レチノール)を妊娠初期に過剰に摂ると、赤ちゃんの器官形成に影響するリスクが指摘されており、産科の現場でも「妊娠初期はレバーやうなぎの食べ過ぎに注意」と、広く知らされています。マスターズ世代や、これから妊娠を考える選手にも関わる話です。該当する方は、自己判断で常食せず、かかりつけの産科に相談してください。これは、レバーの記事で絶対に外せない一点です。

そのほかの、正直な注意

おいしく、賢く食べる

なお、鉄やビタミンDが競泳で不足しやすいことは、栄養戦略の記事でも触れました。レバーは、その「鉄」の穴を、一皿で力強く塞いでくれる切り札です。

今日からの一手

まとめ

レバーは、「体にいいから毎日食べよう」という優等生タイプの食材ではありません。濃すぎて、たまにしか食べられない。でも、ここぞで効く。まさに"切り札"の名がふさわしい一皿です。

もし最近の重さに心当たりがあるなら、まずは検査を。そして次の買い物で、レバーを一パック、かごに入れてみてください。数週間後、後半のひと伸びが変わっているかもしれません。

出典・参考
※ この記事は一般的な知見や公開情報をもとにした読みものであり、医療上の助言ではありません。体に不調があるとき、トレーニングを大きく変えるときは、指導者や専門家にご相談ください。
‹ ライブラリ一覧へもどる